『大人なのよ!/1億3千万総ダイエット王国』 Berryz工房
Berryz工房『大人なのよ!/1億3千万総ダイエット王国』 の感想。
Berryz工房『1億3千万総ダイエット王国』Berryz Kobo[130 million Diet ...
『大人なのよ!』
Berryz工房ほど、知った風な大人達の視線の、このままでいいの?この先どうするの?って空気に晒され続けてきた女の子もそういないと思う。
彼氏にはどんなタイプがいいか
そんなの私に押し付けないで
好きになった人が好きよ
付き合うのは私なの
サビの歌詞が刺さるのは、この人生を決めたのは私だし、この先も私の好きにやるんだという彼女達の強い思いが見えるからではないか。
『1億3千万総ダイエット王国』
例えば「年がら年中」という歌詞を狂ったように繰り返しているのがこの曲の最初のインパクトだと思うけど、その壊れっぷりが、最後には同じく繰返される「お願い」という言葉の切実さに転換されている。世界に対する切実な問い。私たちはどういう世界の中に生きているのだろう。その事と、まさにその世界の中で生きている私がいる。異様な空気に飲込まれながら病的に欲求を生む私を否定して、私は私を救えない。だけどそれでもこの先に愛があるのだと叫ぶのだ。この世界に意味があってほしいと願うのだ。
もちろんこれは自分の人生を真剣に悩みもせずに、絵空事ばかりを考えているいちファンの妄想だけども。ライブを見るまでは、パフォーマンスにおいてもこの感想に近いような、『大人なのよ!』であれば背負ってきたものの「これまで」と「今」を示すような力強さがあって、『1億3千万総ダイエット王国』であれば、異様さを放ちつつもそれと対峙するような悲哀があると思っていた。でも実際に見た雰囲気ではこれとは違っていて、どっちかといえばテクニカルな方向で、ストレートで且つ実直に歌い上げていたような気がする。歌詞である以上に言葉を深追いはしないぞというような姿勢。それがシンプルにすごくかっこいいなと思えた。10年選手としての手慣れた余裕もあり、その貫禄がライブでの迫力を後押ししている気がした。
皮肉めいた言葉を露骨に置きにいくのがつんく歌詞のデフォルトだとしても、世界に対しアイロニーでもって正面切って立ち向かうのは、やはりBerryz工房が一番似合うのではないか。『大人なのよ!』『1億3千万総ダイエット王国』のパフォーマンスを観たときに、少なくとも「今の」Berryz工房は誰よりもそうではないかと感じた。
世界に牙を向けるために作られた武器(言葉)をその身に搭載されても、それを決して自ら使う気はない普通の女子。搭載された武器に気づかず(あるいはフリをしているかもしれないが)、流行に敏感で周りが常に憧れるような、ただかっこいい女性でありたいと願うごく普通の20代。かつての表現者たちの様に、傍観者でも体現者でもなく、自らが気づくことなく無知であるままにアイコンでい続けようとする姿こそが、堂々としながらどこまでも軽やかな彼女達のパフォーマンスを生んでいる気がした。
彼女達の発するすべてに、何が発射されて誰が爆撃にあうかなんて知らない。ただ好きなように演じてかっこよく決めたい。そんな思いがあるからこそ、言葉に引っ張られて鈍重になったり、世界の動じなさに萎縮してしまうこともなく、シンプルにまっすぐ歌が届いて、アイロニーが突き刺さるのだと思うのだ。名曲。