「ちみがそ」の宿題

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『オール・ユー・ニード・イズ・キル』 ダグ・リーマン

 

 

 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』 監督:ダグ・リーマン 出演:トム・クルーズ

 

桜坂洋の同名ライトノベルトム・クルーズ主演で映画化したSFバトル・アクション大作。圧倒的な戦闘力を有する侵略者の襲撃を受ける近未来の地球を舞台に、その侵略者を相手に戦闘と戦死を繰り返す不可思議なタイムループに囚われた一人の兵士の壮絶な運命を描く。共演はエミリー・ブラントビル・パクストン。監督は「ボーン・アイデンティティー」「フェア・ゲーム」のダグ・リーマン
 謎の侵略者“ギタイ”の攻撃によって、人類は滅亡寸前にまで追い込まれていた。そんな中、軍の広報担当だったケイジ少佐は、ある時司令官の怒りを買い、一兵卒として最前線へと送られてしまう。しかし戦闘スキルゼロの彼は強大な敵を前にあっけなく命を落とす。ところが次の瞬間、彼は出撃前日へと戻り目を覚ます。そして再び出撃しては戦死する同じ一日を何度も繰り返す。そんな過酷なループの中で徐々に戦闘力が磨かれていくケイジ。やがて彼はカリスマ的女戦士リタと巡り会う。彼のループ能力がギタイを倒す鍵になると確信したリタによって、最強の“兵器”となるべく容赦ない特訓を繰り返し課されるケイジだったが…。
<allcinema>



自身の死の繰返しによって愛する者の無数の(望まない)未来を片っ端から剪定していく。ただひたすらに。愛する者の先に伸びる無数に枝分かれした未来をその僅かだけでも先回りして見れるというのはとても甘美だ。いつか決定的な死が訪れて枝の先のどこかに埋れてしまっても良いとすら思えるぐらいに。

幾つものトム・クルーズの死。選ばれなかった未来を抱えて彼らは死ぬ。あるいはそれは今現在を生きている私達でもある。振り返れば過去から続くおびただしい数の死体の重なり。その死体達が、死体となる前。死体となる前の彼らはいつだって愛する者を見つめていたはずだ。その誰かの眼差しこそが私達を「今」まで運んできたのではないか。主人公のトム・クルーズが何度も死を繰り返し、その度に愛する者を見つめていた様に。「今」が、最良では無いが最悪ではないどれかであるということ。そして「今」ここから先の場所にも、なるべく最良でありたいと私達は選んでいけるのだ。

この私の夢は誰かがいずれどこかで成し遂げるかもしれない。そのはずだと思えること。私が死んでも誰かがその先を歩むことの希望。そう思えることの希望。『オブリビオン』と同じく、この映画のトム・クルーズもまた何度も現れる。『オブリビオン』での拡散したトムの様に、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』でのループを繰り返すトム。「君は知らなくとも僕は何度でも君に救いにいく」という物語。それによる「何度でも」が世界を改変していく。トム・クルーズとはつまりプレイヤーセレクトした私やあなた自身なのだろう。ゲーム=与えられた運命に打ち勝つのは名前を入力するだけの固有性しかない「名も無き者」達の執念だ。投げ出さない限り誰かが何度でも。この世界だって同じように、無数のゲームオーバーの果てにいつか君を救う事ができるだろうか。それは私じゃない私であっても希望なのだ。