「ちみがそ」の宿題

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『ローン・レンジャー』

 

ローン・レンジャー

監督:ゴア・ヴァービンスキー 出演:ジョニー・デップ アーミー・ハマー

 

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  • コマンチ族は、我々はすでに亡霊であると武器を手にする。トントは悪霊と契約したのだと、さまよい続ける。運命の重さと選択の鈍い音。だが主人公(アーミー・ハマー)が無法者になろうと決意する時の、まるで手にする武器を変えただけかのような身軽さは何であろう。運命に捕らわれない故にヒーローなのだ。
  • ヘレナ・ボナム・カーターも良い。主人公とトントの道中に彼女を加えた方が華があった気もするが、そうはいかない。彼女は主人公達の背中を押すだけ。 その関わらなさと、一瞬の派手さと、直後の飄々とやり過ごす姿と。そこには彼女の強さと気高さがあり、とてもかっこ良かった。
  • 逆襲のはじはりが、ゆるやかに動き出す。したたかな合図から、もう動き出してしまったことに迷いはいらない。列車の上、橋までの間。アドリブの中で過去との決別が軽やかに行われることが素晴らしい。
  • 登場人物たちの向かうべき時の独特のしなやかさは何だろうか。『3時10分、決断のとき』でもそうだった。ラストにラッセルの、それまでの道のりの重さを引き受けたまま置き去ることなしに、勇むことも躊躇することもなく平静に踏み出す「出発」の軽妙さよ。
  • 悪が運び込まれる(キャベンディッシュ)、不吉を呼び込む(少年トントと白人)ことで始まった物語は、自らが運び出すこと(機関車)で追い払うという。運命にケリをつけることが、ゆっくりと動き出す鉄の塊の、その重さの確かさによって果たされるのだ。ここすごく良い。
  • あと、なぜ語り部が必要なのかは少し考えてみるべきだろうか。『パイレーツ・オブ・カリビアン』3作において(特に2作目だが)、オーランド・ブルームキーラ・ナイトレイが選び取るものは常にジャック・スパロウが持ってきたものの中からであること。世界と彼らが接続するには?間には常にスパロウがいる。世界はスパロウを通してしか見えないということ。
  • ローン・レンジャーは死なない男とされている。まるで彼が選び取る手段こそが、【未来】に向かうための唯一の方法のように。我々を目的地に運ぶために、そこに向かう意思の具現である故に、彼はヒーローなのではないか。